渓谷ステージ14:00からのセッションは「山口県でどう働く?二人の女性のストーリー」。
実際に山口県で仕事と子育てを両立されている女性クリエーターお二人にお話を伺いました。
セッションは、補助椅子を設置するほどの満員御礼。女性の皆さんはもちろん、男性の参加者も多く見られました。
働くこと、作ること、生きること
西田優子さん(遊覧船グラフィック)
京都から山口に移ってこられた、フリーランスのグラフィックデザイナーの西田優子さん。
現在は、主に本の装丁などを担当されています。
大学在学中に演劇の公演チラシなどを作成を経て、デザイン会社に就職。その後、大学の研究プロジェクトに関するデザインをしているときに、大学の先生からの紹介で装丁の仕事に携わることになったそうです。
セッションにはご自身がデザインされた本も、たくさん持って来ていただきました。
一言に「本の装丁」と言っても、仕事の内容は一筋縄ではいきません。
まずは本の内容と表紙のデザインが乖離しないように、内容は全部読んで理解することから始まります。
その後、表紙のデザインや本文のマージンの指示はもちろん、紙質、スピン(本にくっついているひも状の栞)や花布など、細かく提案をしていきます。
(ここまでくると、グラフィックデザイナーだけでなくファッションデザイナーの要素も入ってくるのでは…)
表紙のデザインといえばつい目立たせることを考えがちですが、学術書や詩集など常に手元に置いておくものは、目立たないようなデザインにすることもあるそうです。
また、用紙一つを取っても選択肢は山ほどあります。紙の厚さによってめくった感じが変わってきたり、紙の色で読みやすさが変わってくるので、内容によって最適な紙を選択していきます。
しかし、紙によってインクの乗りが変わってくるので、写真が多いのか文字が多いのかなど内容を考慮して書体や文字の太さなども変えていきます。長く流通することを考えて、退色しないインクを選択することも重要です。
以上の点を踏まえた上で、コストも考えなければなりません。
一冊の本ができるまでに、これだけの行程があったとは…
「今度書店に行くときは、紙質やインクの色なども見てみよう!」と、新たな楽しみが増えました。
今までは、「働くこと」=「作ること」になっていたと言う西田さん。今後は、「作る」ときに「生きること」を考えていきたいとお話しされていました。
本は人の心に直接訴えかけるものです。その本のデザインの幅を今後も広げていくために、カリグラフィー(アルファベットを独特のタッチで書く技術)や製本、書道、タイポグラフィ、文字の歴史などを勉強されたり、オリジナルフォントの作成も挑戦されているそうです。
セッション資料
山口で、会社員 / フリーランス / 副業
わたしの目指した働き方
スギイアヤカさん(webデザイナー)
続いては、webデザイナー・グラフィックデザイナー、着付け講師、講師トレーナーなど幾つもの顔を持っているスギイアヤカさんのセッション。
プライベートでは3歳の男の子のお母さんでもあります。
いろいろな勤務体系を経験して、優先バランスが変化していったというスギイさん。
「仕事の自由(やりがい)」・「時間の自由」・「収入の自由」の3つを軸に、自身の体験をお話しいただきました。
まずは、非常勤として企業のweb広報を担当されていたとき。仕事は楽しいけど、一人で仕事をしているためスキルアップが難しかったそう。また、金銭面や時間拘束的な部分でも決して充実しているとは言えませんでした。
その経験を経てweb制作会社に転職。安定した収入と福利厚生を得て、自分の専門分野にも専念できる良い環境を手に入れることができました。
しかし、家族の転勤により在宅勤務に変更。当時は珍しい勤務体系だったので、スケジュールの共有が難しく、孤独感を感じることもあったそうです。その頃、本業の空き時間を利用して着付け講師の副業を始められました。
その後、出産を機に家族で過ごす「時間」が最優先になったため、フリーランスという道を選択されました。
時短勤務やパートタイムなどの選択肢もある中、なぜフリーランスを選択されたのでしょうか。
在宅勤務や副業を経験し、フリーランスへのハードルが下がったこと、必要な情報を得やすくなったこと、フリーランスで働く環境が変わってきたなどを挙げられていましたが、始めからフリーランスになろうと思っていたわけではなく、「今の自分に合った働き方がフリーランスだった」と言われていました。
スギイさんが考えるフリーランスに向いている人の条件は、
- 自分主体で動ける人
- 失敗を恐れずに失敗から学べる人
- マイナスをプラスに変えられる人
- 苦手分野にも対策できる人(自分で努力するか、人に頼むことができるか)
いろいろなことに興味を持ち、スキルアップを意識して行動することが大切とのこと。
また、「周りと比べない」こと。「強みは自分には分からない、当たり前にできることが強み」だと言われていたのが印象的でした。
スギイさんが仕事をする上で心がけているのは、「常に自分主体で考える」こと。
「自分が」家族と一緒にいたいから働き方を変えていくなど、子どもがいることなど境遇を言い訳にせずに自分で選択することによって、より働きやすい環境になっていきます。過去に前例がないことでも、周りに要望を伝えてみるのも重要です。
Happyの種類は人それぞれ、何通りもあります。それが仕事であっても趣味であってもいいです。しかし、軸は「自分」、選ぶのも「自分」です。「自分の幸せは家族の幸せ」という言葉でセッションは締めくくられました。
セッション資料
質問タイム
セッション後の質問タイムでは、地方で働くこと、子育てをしながら働くことについての質問が飛び出しました。
Q.山口県で働く上でのメリット、デメリットは何だと思いますか。
(西田さん)
「リモートで関西などの仕事をしていて、職場に行かないので、自分の家庭を大切にした働き方ができますね。あと、お酒とご飯が美味しいです(笑)その反面、印刷物や色校正など現物を見るのがどうしても遅れてしまいますね」
(スギイさん)
「人を介しての仕事が多いため、信頼感があるのでスムーズに仕事を進めやすいです。でも、都会では常に美術展やデザイン展を開催しているのに、山口では自分で探しに行かないと情報を得られないのはデメリットだと思います」
Q.子どもを育てながら働くということについて
(西田さん)
「自分は子どもが5か月ぐらいのときから働いていましたが、子離れが遅い気がして…。逆に小さい時からベタベタ接しておくと子離れが早い気がします(笑)」
(スギイさん)
「今子どもは3歳なんですが、保育園から帰ってきた後は基本的に仕事をしない、または寝た後にすることを心がけています。子どもが風邪をひかないので、それは運が良かったなと思っています。また、お迎えなどは夫に結構任せるようにもしています」
感想
山口県でクリエイトに関わる仕事をしている女性として、身につまされるお話が多かったです。今後スキルアップしていくための考え方のベースとなりました。自分の強みを見つけていくために、「当たり前にできること」を今一度立ち返っていきたいです。
今、一番リアルなセッションをありがとうございました!
レポート:アズマユミコ
あーりん!昨年に引き続きありがとうございました!
なんか今更だけど、わたしやっぱフォント好きだわ
— a-RING (@a_rin_ww) October 27, 2018