僕がやってきたこと、やっていること。デザインとの付き合い方。

渓谷ステージのセッション01は嵐川真次さん。
岩国生まれ、秘境育ちの凄腕デザイナーです。
元々自分がお話を伺いたい…と思っていた「話を聞きたい県内デザイナー5選」のうちの一角でした。ダメ元でアポイントしてみた所、何故か快諾頂け、登壇いただける運びになりました。
実際に嵐川さんが手掛けた制作実績から紐解いていくセッション。まず冒頭でこのように問われました。
  • なぜ賞に応募するのか?
  • なぜ協会に入るのか
  • 見た目よりも売れてなんぼでは?
  • 社会活動の必要性

ご自身の出自から、経歴とともに語られていく形でセッションは進みました。

就職から独立まで

福岡工業専門学校グラフィックデザイン学科を卒業後、そのまま福岡のパッケージ専門のデザイン会社に勤務。
そして地元・岩国の印刷会社へ転職しますが、もっと大きな仕事がしたかったためすぐ辞めてしまったとのこと。
その後、広島県の広告代理店へ。主に広島パルコやドコモのビジュアルデザインを手がけ、毎週のように提案を行っていたそう。そこでの仕事は、何度となく倒れてしまうような仕事量だったとのことでした。でしょうね…。
5年ほど勤めた後岩国へ戻り、ギャッツビーと銘打ち独立しました。が、名付けたはいいものの、どうしてもマンダムのアレが気になり、ご自身の名前に由来した現在の会社名、ストームグラフィックスに改名。
独立当初は、主に東京方面の仕事を手がけられていたそうです。

大きな転機と繋がり

自身のターニングポイントとなった仕事は岩国美術館+柏原コレクションの長州鐔図録とポスター2種が2009年 広島アートディレクターズクラブにて入選。ショーゲームでの入選はこれが初だということでしたが、審査員の浅葉克己氏から好評をいただいた作品になりました。
この広島アートディレクターズクラブの受賞パーティでD-NETを主宰するデザイナーのはせがわさとし氏に出会い、意気投合。この時の出会いがきっかけでJAGDAに入会し、「SDC(住まいづくりデザインセンター)山口」のデザインなどを担当することに。それらを手がけるにあたり、ブルータスなどで気になる建築を探していた所、ドンピシャな建造物を発見。それが岩国市出身の建築家 窪田勝文氏の手がける建築でした。なんと事務所ビルが2件隣(端的に言って奇跡)。 雑誌を持って事務所を訪問したそうです。それがきっかけでシステムキッチン「Archi01」のビジュアルデザイン等を担当されました。
その時、山口県デサイン協会に誘われ入会。その山口デザイン協会が開催したデザインコンペティション「CCXY」にも同作品を出品。銅賞を受賞。(私もその場にいました)
その後、資生堂宣伝部 澁谷克彦氏との出会いがあり、意気投合。「一緒に平和のポスターを作ろう」ということで、共同で制作しJAGDAの企画展に出典したのが「オリヅル  FOR  HIROSHIMA」。これが2015年、International Eco Poster triennale The 4th Block(ウクライナ)に選ばれています。

躍進を続けるストームグラフィックス

窪田勝文氏からの仕事も引き続き手がけており、KitchinHouse福岡ショールームのサイン計画を担当。
この仕事が同年、東京アートディレクターズクラブに入選。続くように第49回 日本サインデザイン賞入選、広島アートディレクターズクラブ 会員審査賞と目覚ましい活躍を遂げました。端的に言ってすごい(こなみかん)

そして2016年、田布施第2保育園のサイン計画をデザインすることとなります。(私の記憶にも新しい仕事です)
こどもから大人まで、総合的な目線で考えられたサイン計画はとても独創性あふれるもので、建築物として高いクオリティを保ちつつ、温かみや手作り感を感じさせる、高度にデザインされたサイン計画でした。様々な賞にノミネートされ、注目を集めます。
(2016 Graphis Design Annual 2017 Competition 銀賞/第50回 日本サインデザインアワード2016 中国地区賞/第50回 日本サインデザインアワード2016 日本サインデザイン賞 入選/第8回 広島アートディレクターズクラブ2016 環境・空間・サイン・ディスプレイ賞)

これら様々な仕事が評判を呼び、クライアントは大企業から地方団体まで、様々な案件を手がけられています。

これからのグラフィックデザイナーに必要なこと

そんな大活躍中の嵐川さんが思う、グラフィックデザイナーに必要な項目が次の5項目です。
  • 発想力
  • 造形力
  • 審美眼
  • 情報収集
  • コミュニケーション力

これら5つの要素が相互に連携しあって初めて高いデザイン力を発揮することができる、ということ。
これは冒頭で問われた疑問「なぜ賞に応募するのか?/なぜ協会に入るのか?/見た目よりも売れてなんぼでは?/社会活動の必要性」に直結します。それは社会のコミュニケーションのなかで新たな繋がりを作り、デザインしていくということです。
嵐川さんの仕事を見ていくと、クオリティも勿論高いのですが、それ以上に人と人で繋がっていっているモノがほとんどです。「口伝が最も強い情報」と言われるように、確かな仕事が噂を呼び、次の仕事に結びつく。様々な賞に応募するのも、自らの審美眼を高めるという目的と同時に、同じく高い志を持った人との繋がりを作れる場となるからです。
また、デザインを軸とした社会活動を根気強くやっていく。そうやってデザイン自体の価値を高める必要性があり、よりよいデザインが作れる環境を自分たちで整えることが大切と仰られていました。
 
「デザインは見た目を変える仕事」と思われている場面が多々あります。見た目もそうですが、意識も変えていくことがデザイン本来の力。デザインするということは元々メリット・デメリットを含むものなので、大事なのはきちんと発想をし、その意図をクライアント側で意識共有してもらえるかということ。そのデザインが売れた/売れないは実際には企業努力の問題なので、デザイナーの手柄と思うべきでないということ、そして「目に見えない意図」を形としてアウトプットし、可視化していくことがこれからのデザイナーには必要、ということを仰られていました。

最後に

ボリュームが多すぎて講演時間を若干時間をオーバーしてしまい、すべては伝えられなかったそうですが、素晴らしいセッションでした。
正直、表舞台に出るのは得意ではないそうです(私もそうですが)。いま思えば登壇に快諾頂けたのも嵐川さんの仰られている「社会活動の必要性」をご自身で実感され、実行されている証明だと感じました。すげえな…。我々も適宜やっていかないとな…。

セッション資料

レポーター:サイモト コウタ

この記事を書いた人

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