モリサワフォントのこれまでとこれから

モリサワ様01

概要

モリサワの「これから」をこれまでから紐解くセッション

お昼ごはんを終えての洞窟ステージでは、株式会社モリサワ 仁田野 良介さまのセッションが行われました!
なんとクリエイティブハント3回連続でのご登壇、「流石に呼び過ぎなのではないか…」という懸念もあったのですが、フォントを知りたいという欲は尽きることなく、ご登壇いただくけることになりました。本当にありがとうございます。

これまでご登壇いただいた2回は、どれかといえば「UDフォント」についてのお話が主だったのですが、今回はモリサワのレギュラー書体についてお話いただけるということで、これまでとはまた違ったセッションとなりました。

写真:株式会社モリサワ、仁田野様

モリサワのこれまで

創業は1924年。世界に先駆けて「邦文写真植字機」を発明しました。
実用機は1929年にその実用第一号が完成。フォントメーカーではなく機械屋からのスタートでした。

そして1948年、「写真植字機製作株式会社」が設立された年に万能型写真植字機「MC型」が完成。
ここから本格的に「モリサワ」が始まりました。

1955年にはモリサワ写真植字機書体文字第1号として「中明朝体AB1」「中ゴシック体BB1」の「基本書体」と呼ばれるモリサワオリジナルの文字盤を発表され、1960年代には活版印刷で使っていた活字書体のニーズがあったことから、それらの書体の文字盤化を行いました。

時代が進む中で、1970年代には専門の職人ではなくデザイナーが書体設計をした「タイポス」が登場。そのモダンな書体が非常に人気を得、続々とバラエティ豊かな書体が発表される「新書体ブーム」の先駆けとも言える時代でした。

そして1980年代。統一したデザインコンセプトに基づいたウエイトのある書体が求められるようになり、グラフィックデザイナーの巨匠 田中一光氏が設計した「ツデイ」に代表される、書体を計画的に設計・展開する「書体のファミリー化」が進みました。この時代に「リュウミン・新ゴファミリー(小塚昌彦氏監修)」「じゅん(三宅康文氏デザイン)」が登場したそうです!すごい!同い年くらいだったのか俺!

写真:株式会社モリサワ、仁田野様2

デジタルフォントの時代へ


そうして1984年、アップル社が「Macintosh」を発表。それに伴い「QuarkExpress」「PageMaker」などの組版ソフトが登場。DTPをするのに日本語フォントが足りない、という経緯から書体のデジタル化に取り組みました。
その後、日本語ポストスクリプトプリンタ「LaserWriter」に2書体ほど搭載したことを皮切りに、そこからデジタルフォント時代へ突入していきました。

デジタルフォント時代を経て、現在はライセンス制で書体が好きなだけ使える「多書体時代」!
長い取り組みがあって現在のような自由にフォントを使える状況が作られたことを話されました。
「1年に一回、嫌がらせのように新書体をリリースしてます」とのこと。
いや全然嫌じゃないですよ…。

モリサワフォント

そこから、現在も活躍しているモリサワフォントの話に移りました。
先程話しのあった新ゴや私の大好きなゴシックMB101(DBがすきです)や、今回のクリエイティブハントでメイン書体として使用しているA1ゴシックについてお話を伺いました。
A1ゴシックはA1明朝と設計思想が同じくした兄弟分だそうです。A1明朝はもともと古くからあった書体だったそうですが、デジタル化したことで若い世代の人の目に触れることで再評価され、一時期爆発的に使われました。
私も昔やたらとA1明朝を使ってましたね…。今ももちろん使いますよ!

そしてリュウミン。モリサワの中でもスタンダードな書体として知られていますが、その種類は細かく分かれているそうです。例えば形式番号についている「KL」や「KS」や「KO」、これはそれぞれ「かなラージ」「かなスモール」「かなオールド」を表しており、同じプロポーションのようでもそれぞれ違う顔を持っているので、その違いをデザインに生かしてほしいと仰られていました。
書体の制作にしっかりと取り組み、長くやってきたからこそ生まれる盤石感や多様性がよく分かるお話でした。

2019年 新書体リリース情報

今年も新書体を発表するとのことで、リリースに先立って数書体紹介していただきました。

写真:2019年 新書体リリース情報

剣閃 
見出し用の和文デザイン書体。しっかりした黒味で強い存在感のある書体。
非常に躍動感に溢れた書体ですが、どこか上質感のあるプロポーションが特徴的。

古琴
かなの展開を「京かな」と「遊かな」の2種類持つ、優しいレトロフォントです。
手書きの風合いもあるのですが、全体のバランス感がスゴイ!

秀英にじみ角ゴシック
活版印刷のインクの滲みを再現した秀英ゴシック書体です。「金」と「銀」があります。
これまでは明朝体ばかりのリリースでしたが、ついにゴシックが!個人的にも嬉しい!(ゴシック好き)

赤のアリス
タイプブランドになったかな書体「TBかな 赤のアリス」に漢字を追加した書体。
大正レトロ感を感じさせる、非常にモダンで可愛らしい書体です!あと名前力がすごく強い。

写真:モリサワ様セッションの様子

仁田野様も「嫌がらせのように」とおっしゃるとおり、年々凄いペースで良質な書体が増えていっています。
提供するモリサワ様としては大変でしょうが、デザイナーとしては非常に嬉しいですね!
リリース(ダウンロード開始)は10月24日の11時から! 以下URLから詳細がご覧になれますので、ぜひご覧くださいませ!
2019モリサワ新書体 ▶ https://www.morisawa.co.jp/topic/upg2019/

また、現在モリサワフォントの中には「AP-OTF」というフォントがあり、こちらはインデザイン、イラストレーターで使える2種類の文字詰め情報が入っているフォントです。フォント名は同じでも形式番号で文字詰め情報が違うため、安易に置き換えてしまうとレイアウトが大きく変わってしまう可能性があると仰られていました。注意しないとですね!

モリサワの新たな取り組み

そんなモリサワですが、今年からモリサワフォントを導入している教育機関に向けて、「認定校セミナー」を行っているそうです。これからデザインを生業としていく若い方に、どのようにして文字を組むのか?ということを基本から教えているとのこと。その触りの部分を少し講義していただきましが、行間やポイントの考え方など正直すごくためになる内容でした!残り時間の関係であっさり終了したのが非常に惜しい…。
羨ましい…羨ましいぞ若者!ぜひ次回はソレをハントでやっていただけないだろうか…(4回目連続登壇依頼の可能性)

写真:モリサワ様セッションの様子2

まあソレは置いといて、たしかに文字組みはデザインの基本ですし、一瞥した時に大きく印象を左右する部分でもあります。それを若いときから知っておくのと知ってないのでは雲泥の差があると思われます。非常に良い取り組みだなと思いました。

これからも文字とともに

モリサワ様は2020年の東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルサポーター契約をしており、フォントデザイン&開発サービスのカテゴリスポンサーに決定しているなど、今なお大きく活躍している企業です。
今回のセッション内でお話いただいた新しい取り組み、そしてそれを書体を中心として支えてきた確かな基礎、どれも素晴らしいものに思えました!
また、モリサワ様にはプレゼント抽選会やスポンサーとしてもご協力いただいております。企業として大きく邁進しつつ地域貢献にもしっかりと協力していく姿勢、そしてその中心に素晴らしいフォントの仕事がある。
非常に色々なことを考えさせられる、あと単純にフォントの知識が楽しいセッションでした!(それに尽きる)

モリサワ様ご協力、ご登壇本当に感謝いたします!
重ねて、御礼を申し上げます。ありがとうございました!

レポーター

モリサワ様とレポート・司会担当

サイモトコウタ 大村印刷株式会社YWCD

この記事を書いた人

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